『マジックと意味』絶賛発売中!
★『マジックと意味』、このタイトルの「意味」がわかると、多くのマジシャンは次のステップに踏み出せることでしょう。
★悩めるマジシャンにとって、本書はブレイクスルーを起こす切っ掛けを与えてくれます。
★本書を日本語で読めることは私だけでなく、すべての日本人マジシャンにとって「福音」です。
★マジック関連の読み物として、これだけ役に立ち、おもしろいものは他にありません。
三輪晴彦(マジェイアの魔法都市案内)
この本では、ダイ・バーノンのツイスティング・ジ・エーセスとカッティング・ジ・エーセスの大きな違いを指摘しています。一方は観客の心の奥底に響き、他方は全く響かないとの厳しい指摘です。それはどういうことでしょうか。
思いやりのある人物であっても、マジックを演じると無礼で嫌なやつになりかねないとは、なぜなのでしょうか。多くのカードやコインのクロースアップマジックは自己満足的であるとの厳しい指摘もあります。また、演じたマジックがどうなっているのか、観客に考えさせてしまう点の問題もあげています。
マジックの核心部分にあるものは何なのか。マジックとは、その起源は、なぜこの世に生じたのか、マジックが象徴しているものは、どのような意味が隠されているのか。マジックの演技とは「エンターテイメント」なのか。自分のマジックにどのような意味があるのか。
その答えを見つけ出すために、マジックの起源を取り上げています。20世紀には数冊のマジックの歴史書が発行され、マジックの起源について書かれていますが、いずれに対しても痛烈な批判をしています。文字も文明もなかった古代のことを、科学が発達した20世紀の上から目線の考えで解釈していたからです。あまりにも有名で再販を繰り返したミルボーン・クリストファーのマジック歴史書に対しては「的外れ」との特別に厳しい批判です。他分野では古代の研究が進んでいる中で、マジック書の歴史記載が古いままの問題を指摘されていました。
呪術師のマジック、初期のマジック、マチネー(昼興行)のマジック、トリックスター、寓話的マジックについてなど、例をあげて書かれています。そして、7つのマジック作品も解説されますが、その中の3つは日本人にはなじみの薄いゴスペルマジックです。それを分かりやすく興味深い作品として紹介されていました。
この本の著者の一人がユージン・バーガーです。1978年にプロ活動を始めて以来、クロースアップマジックのトップスターとして活躍され、マジック発展にも貢献されてきました。心に響くマジックを追求されてきたと言っても過言ではありません。もう一人がロバート E. ニールです。トポロジカルマジックやトラップドアの解説書に始まり、その後も多数の独創的なマジック書を発行されている目が離せない一人です。彼は牧師でもあり、24年間も宗教心理学の教員として活躍されていた経歴があります。初期のマジックやその後のマジックに関しての興味深い視点で書かれています。
2015年の日本語版製作の承諾を受けてから日本語版完成までに9年も経過していました。読者の知性を刺激するために詩のような言葉で綴られていた部分も多く、一語一語を吟味しながらの訳文を作り上げる作業は大変であったと推察できます。また、古今東西の文学的文章が多数引用されており、その翻訳作業や禅宗に関する記載部分も、多くの方々の指導を受けられていました。お二人の著者は多数の著書を発行されていますが、その中でも原文で読んで理解するのは大変な著書であり、その日本語版がやっと発行されることになりました。
マジック理論書が多数発行されていますが、理論書とは違う視点の価値があります。この本の目的が、特定の意見や見方を押し付けるものではないことを強調されている点も好印象が残りました。手順、演出、話し方、観客に対する態度などを、マジシャンが心をこめて考え直してみるよい機会になるのではないかと期待しています。
石田隆信(フレンチドロップ『石田コラム』著者)